こんにちは、明石高専の都市システム工学科(土木)を卒業したとたんです。
「高専(高等専門学校)って結局どんな学校なの?」
偏差値が高いと聞くけれど、高校とどう違うの?就職は本当に有利?大学編入は?といった疑問を持つ中学生や保護者の方は多いでしょう。高専は、5年間で即戦力の技術者を育成する、日本独自の非常にユニークな学校です。
この記事では、元高専生である私自身の経験を交えながら、高専の基本的な仕組みから、「高専は頭がいいのか」「高校・大学との具体的な違い」といった疑問まで、高専のすべてを徹底的に解説します。
今回は、高専受験を考え始めたお子さんを持つ保護者の方々に向けて、高専の魅力やメリット、受験に必要な情報をわかりやすくご紹介します。
目次
高専とは?仕組みと基本情報(高専の全体像)

「高専」という独特な教育機関の仕組みを正確に理解することが、その後のキャリアや進路を検討する土台となります。
特に、高校や大学とは異なる学歴上の位置付けについて、誤解のないよう解説します。
と言われてもわかりにくいですよね。簡単にまとめます。
高専の正式名称と種類(国立・公立・私立の違い)
高専の正式名称は「高等専門学校」です。これは、第二次世界大戦後の高度成長期に、日本の産業界が求める即戦力の技術者を育成する目的で創設されました。世界的に見ても非常にユニークな教育機関です。
高専は、設置主体によって国立、公立(都立・県立)、私立に分けられます。特に、全国に51校設置されている国立高専がその中心的な存在であり、『高専とは 国立』という検索が多いのは、国立高専がその代表格であるためです。
高専の「5年一貫教育」の仕組みと卒業資格
高専の最大の特徴は、中学校卒業後から入学する「5年一貫教育」にあります。
- 期間: 5年間(通常の高校3年間と専門学校・短期大学2年間に相当)
- 教育内容: 最初の2年間は一般科目(数学、理科など)が中心ですが、高校よりも深く学び、3年生以降は専門科目が急増します。
そして、5年間を修了し卒業すると、「準学士」の称号が授与されます。これは大学の学部卒業(学士)に次ぐものとされ、「高卒」とは明確に区別される専門技術者としての学歴となります。
高専は「高校」でも「専門学校」でもない(学歴上の区分)
高専は「工業高校」や「専門学校」と混同されがちですが、これらは学歴上の位置付けが大きく異なります。
| 学校区分 | 期間 | 卒業資格 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 高等専門学校(高専) | 5年間 | 準学士 | 即戦力の技術者育成 |
| 工業高校 | 3年間 | 高卒 | 就職のための学校 |
| 専門学校 | 2〜4年間 | 専門士/高度専門士 | 専門的な職業教育 |
つまり、高専の学歴とは「準学士の学位を持つ、高卒以上の専門技術者養成機関の卒業生」という位置付けになります。
高専は「頭がいい」?偏差値と学力レベル

高専といえば「頭がいい」「天才肌の集まり」といったイメージが先行しがちですが、実際の学力レベルや偏差値はどうなのでしょうか?ここでは、高専の学力レベルの真実と、あなたの地域での高専の位置付けについて解説します。
「高専は頭がいい」と言われる理由と偏差値の真実
「高専とは 頭いい」とGoogle検索に出てきますが、ある意味で事実です。
高専入学の難易度が高いから
多くの国立高専は、その地域でトップクラスの進学校に匹敵するか、それに次ぐ高い偏差値を誇ります。特に、数学や理科などの専門科目の入試は難易度が高く、地頭の良い学生が集まる傾向にあります。
高専卒業後の進路が優秀だから
多くの卒業生の進路が、大手企業への就職や難関国立大学の3年次編入というエリートコースであるため、結果として「優秀な学生が集まる学校」という評価が定着しています。
ただし、大切なのは偏差値そのものよりも、「工学が好きで、将来技術者になりたい」という強い目的意識です。
あなたの地域に高専はある?全国高専一覧と設置学科
高専は全国に58校(国立・公立・私立を合わせて)あります。
自分の住んでいる地域に高専があるかは、文部科学省の『全国の国公私立高等専門学校の学科一覧』で確認ができます。
学科について
設置学科は、機械工学科、電気電子工学科、情報工学科、そして私が卒業した土木(都市システム工学)など、産業の基盤を支える工学系がほとんどです。
受験を検討する際は、希望する専門分野がその高専にあるかを確認し、高専受験に特化した対策を行うことが重要です。
【明石高専卒が語る】高専生になるメリットと卒業後のキャリア

高専で学ぶことの最大の魅力は、その後のキャリアにあります。卒業後、すぐに即戦力として活躍できる高い専門性と、その後の進路の幅広さは、他の教育機関にはない特権です。明石高専で土木工学を学んだ私自身の経験を交えながら、具体的なメリットを紹介します。
【高専のメリット1】専門知識を早く深く学べる(就職直結のスキル)
高専では、1年生から工業系の専門知識の基礎が始まります。一般的な高校よりも深く、そして早く専門分野に特化するため、5年間で技術者としての確固たる土台を築くことができます。
実習が豊富
実習が豊富: 座学だけでなく、実験や実習が非常に多いのが特徴です。私が在籍した都市システム工学科(土木)でも、測量実習や水理実験、地盤工学実習など、「手を動かす」経験を重視していました。
社会に出た後の応用力が身に付く
この実習経験のおかげで、会社に入ってからの実験計画や報告書作成などを、戸惑うことなくスムーズに行うことができました。高専で培われるのは、知識だけでなく、社会で役立つ「実践力」です。
【高専のメリット2】就職に圧倒的に強い
「高専とは 就職」という検索が多い通り、高専は就職において最強と言っても過言ではありません。
企業からの高い求人倍率
企業、特に大手製造業や建設業は、即戦力となる技術者を求めて高専に殺到します。求人票が学生数に対して圧倒的に多く、求人倍率は20倍と常に高い水準を維持しています。
優秀なキャリア
高専生は、一般的な新卒採用枠とは異なり、高専生は推薦枠を通じて、安定した優良企業へ技術職・研究職として就職するキャリアパスが保証されます。
【高専のメリット3】大学編入で難関大学も狙える
高専卒業後の進路の約半数は、大学の3年次への編入です。「高専から大学編入」は、高専が持つ非常に大きなメリットの一つです。
編入の優位性
一般入試を経由せず、国立大学(東京大学、京都大学など)や難関私立大学の工学部へ、高専の専門知識を活かして編入できます。
時間と費用のメリット
年間で大学卒業資格(学士)を取得できるため、経済的・時間的なコストを抑えつつ、最終学歴を「大卒」とすることが可能です。
明石高専卒が語る:技術力と同時に身についた「社会性」
高専での経験は、専門分野の勉強だけではありませんでした。私が所属した学生会での経験は、その後のキャリアにおいて非常に大きな財産となっています。
学生会での学び
高専祭や文化発表会の運営、部活動間の予算決めなどを担当しました。これは、専門分野外の学生や教員との多様なコミュニケーションや調整力を磨く機会となり、社会に出てからのマネジメントスキルの基礎になりました。
高専で得られるのは、専門知識だけでなく、社会で役立つ「実践力」と「協調性」です。
『高専はやめとけ?』デメリットと後悔しやすい点

ネット上には「高専 やめとけ」といったネガティブな意見も散見されます。しかし、これは高専の特性を理解していないために起きる誤解も多いです。
元高専生として、知っておくべきデメリットと、入学後に後悔しないための心構えを正直にお伝えします。
【デメリット1】留年リスクと勉強の難しさ
高専最大のハードルは、留年リスクの高さです。
進級要件の厳しさ
一般的な高校に比べ、専門科目の難易度が高く、進級要件が非常に厳しく設定されています。複数の科目を落とすと、即留年となるケースが多く、毎年一定数の学生がこの壁に直面します。
特に3年生以降は、構造力学や流体力学など、大学レベルの専門知識を一気に学ぶため、勉強についていけなくなる学生が出てきます。
【デメリット2】一般的な高校生活との違い
設置学科が工学系に偏るため、男女比が著しく偏る(男子が多い)という現実があります。「高専とは 女子」という検索がある通り、女子学生にとっては独自のコミュニティになります。
高校との文化の違い
部活や文化祭(高専祭)はありますが、一般的な高校のような華やかさとは異なります。**「普通の高校生が送る青春」**とは違う5年間を過ごすことになる、という覚悟が必要です。
元高専生が語る「やめとけ」に対する正直な意見と乗り越え方
「なぜ高専を辞めてしまうのか?」という疑問に対し、卒業生として最も正直にお伝えしたい真実があります。
入学をオススメしないケース
単なる「大学進学へのツール」として利用したいならオススメはしません。
高専は技術者を育成する専門職養成機関であり、編入のためだけに利用しようとすると、必須の実習や専門科目の多さに疲弊し、結果的に中退につながる可能性があります。
なんとなく賢いから入学するケース
「土木の勉強をしたい」といった漠然とした思いでも構いませんが、工学や技術者になるという小さな目標がないと、勉強が苦痛になる可能性が高いです。
高専の5年間を乗り切るための心構え
大切なのは、「技術を身につけて社会で活躍したい」という志です。
そして、孤独にならないことです。学生会や部活動を通して学年を超えたサポート(先輩)を積極的に頼り、課題や専門科目の乗り越え方を学びましょう。
そのために、面倒に思える学生会に入ることはオススメです。
高専と他の学校(高校/大学/専門学校)との違いを比較

高専が自分に合っているか判断するためには、他の進路と比較することが不可欠です。
ここでは高専が他の学校とどのように異なるのかを、教育期間、目的、卒業資格という観点から表で整理します。
| 比較項目 | 高専(高等専門学校) | 高等学校(工業高校など) | 大学(学部) | 専門学校 |
| 教育期間 | 5年一貫(中学卒から) | 3年間 | 4年間 | 2年〜4年間 |
| 卒業資格 | 準学士 | 高卒 | 学士 | 専門士/高度専門士 |
| 教育目的 | 即戦力の技術者養成(実学中心) | 進学・就職のための基礎教育 | 研究・専門知識の理論追及 | 職業に必要な技術の習得 |
| 就職 | 推薦枠が多く圧倒的に有利 | 一般的な高卒枠 | 一般的な大卒枠 | 専門分野の求人 |
| 編入/進学 | 大学3年次への編入が可能 | 大学受験が必要 | 大学院進学が可能 | 大学編入は限定的 |
高専 vs 高校:どちらを選ぶべきか?
高校は一般教養が中心ですが、高専は1年生から専門知識の基礎を学びます。高専の5年間は高校3年間と短大2年間を合わせたカリキュラムであるため、同じ年齢でより深い専門知識と準学士の資格が手に入ります。
「将来、こんな仕事がしたい目標が明確にあるか」が大きな分かれ目です。明確な目標があれば高専、まだ進路に迷いがある場合は一般的な高校が適しています。
高専 vs 大学(大学編入):最終学歴はどうなる?
高専は5年で準学士、大学は4年で学士です。最終的な学士取得を目指す場合、高専を卒業して大学に3年次編入すれば、計7年(高専5年+大学2年)で学士が取得できます。
高専編入ルートは、大学受験の負担を避けつつ、高専で得た実践的な技術力を土台に、難関大の理論を学ぶという理想的なキャリアパスを描けます。
高専 vs 専門学校:学歴や就職の違い
専門学校は職業教育が中心ですが、高専は準学士という学術的な学位が得られます。また、高専の教育には、大学工学部と同等の理論的な側面も含まれています。
「高専 専門学校 どっちが上」という議論がありますが、学歴上は準学士を持つ高専の方が優位であり、就職の際の大手企業からの求人や給与水準にも差が出るケースが多く見られます。
まとめ:高専とは「未来の技術者」を育てる最良の選択肢

本記事では、高専の仕組みから、高校・大学との違い、そして元高専生だからこそ語れるメリットとデメリットを解説しました。
高専は、「実学教育」を通じて即戦力となる技術者を育ててくれる、素晴らしい教育機関です。明石高専で実際に学んだ私の経験から見ても、「なんとなく」ではなく、「技術者になりたい」という明確な目標を持つ中学生にとって、高専は最高の選択肢であり、その後のキャリアにおいて大きなアドバンテージとなります。
留年リスクや勉強の厳しさといったデメリットはありますが、それを乗り越えた先に、圧倒的に有利な就職と、難関大学への編入という輝かしい未来が待っています。
高専に入学するなら
もしこの記事を読んで高専への進学意欲が高まったら、次は「具体的な受験対策」に進みましょう。
高専受験の対策について、『高専の受験対策を完全ガイド|合格するための勉強法とおすすめ参考書
』で詳しく解説しています。
僕の明石高専での経験が、あなたの進路決定の一助となれば幸いです。
